冴えない社会人の恋人探しの旅

冴えないサラリーマンのリアルを綴る。雑記多め。名古屋→東京へ転職を機に帰還。彼女探しの旅なう

梅雨と共に去った女

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長かった梅雨空は過ぎ去り、
例年通りの暑い日々がやって来た。


8年前に全国民が開催に歓喜した
東京オリンピック2020は、
ひっそりと開幕し、そして
ひっそりと閉幕していた。


街にお祭りムードが流れるわけでもなく、
オリンピックが閉幕すると
テレビ報道も手のひらを反すように
コロナの報道へと切り替わる。


昨年と同様の自粛ムード。
今年も夏祭りも花火もない。
地元に帰ることもできない。


面白みもクソもない暑く暗い夏だ。


エアコンが効いた部屋で
冷えた緑茶を片手にNetflixを漁る日々。


テレビのスイッチを切ると同時に
このまま夏が終わってしまうのかなと
喪失感と閉塞感に襲われるAM1時。


ベッドに横たわると同時に
窓の外から聞こえてくる雨の音。


雨戸越しに聞こえる雨の声は
何故か妙に心地良かった。



実は長く降り続いた梅雨の日々の中で
ある女性との出会いがあった。



別に付き合ってたわけでも好きになった
わけでもなかったから
ブログに書こうかどうか迷っていた。


だけど、この夏を過ごした軌跡を感じたくて。
少し思い出を綴ろうと思う。




彼女との出会いはマッチングアプリだった。



何気ない日常に何か刺激がほしくて
アプリを再び始めた。


そこでマッチングした彼女は、
26歳の凛として気が強そうな女性だった。


プロフィールもシンプルな文章だったが、
音楽の趣味が合っていたのと、
「こういうご時世だからこそ、一緒に過ごして楽しめる人と出逢いたい」という一文に惹かれていいねを押した。


メッセージの段階では普通の女性に
思えたがLINEを交換して、
電話をした時に彼女の素性を知った。


端的に話すと、
彼女は非常に変わった性格をしていた。


IT企業のエンジニアとして
毎日遅くまでバリバリ仕事をする
表の顔と

ゲイバーにいったり、
ゲテモノ料理を食べたり
山手線を自転車で一周したり、
ぶっ飛んだことをすることが好きという
裏の顔があった。


ルックスは良いけれども、
性格が仇となっているのか
暫く彼氏はいないらしく、
今後も暫くはいらないそうだ。


マッチングアプリも友達探しを
目的に始めたらしい。


そんな彼女と初めて会ったのは
あるトルコ料理のお店。


彼女きっての希望だった。


そのお店ではトルコという国がいかに
素晴らしい国かという話を熱弁された。


更に、今日のためにトルコ語を練習してきたらしくトルコ人の店員さんに絡みはじめる。


店員さんも苦笑いしていた。


トルコ料理のお店を出たあと
そのまま筆者の家に行きたいと言い始めた。


あわよくばと下心に負けた筆者は、
快く彼女を家に招き入れた。


部屋に入ってから、
彼女は部屋の匂いを嗅ぎ始めた。


部屋の匂いでその人の性癖が分かるらしい。
やっぱり変わっていると思った。


その日のうちに手を出そうとしたが、
今日私に手を出したら、不幸が起きるよと
言われて、なんだか萎えてしまった。


結局YouTubeで都市伝説を扱う
YouTubeチャンネルを観た。


くだらい都市伝説の考察動画にも
子どもの様にはしゃぐ彼女を見て
恋愛感情とは違う愛しさを憶えた。


それからも彼女は気まぐれに
連絡を寄越してくるようになった。


仕事終わりのPM10時。
今からドライブに行かないかと連絡が来た。


タイムズカーシェアで車を用意して
彼女の最寄り駅まで向かい、
彼女をピックアップした。


そこから横浜まで車を走らせる。


こんな時間に呼び出すなんて
ほんと都合の良い男扱いだねと話すと
それじゃあ、貴方も私を都合の良い女にすれば
いいじゃんと不敵な笑みを浮かべた。


夜の横浜の街を初めて運転した。

港の灯りとビルの灯りに照らされて
びっくりするぐらい綺麗な夜景だった。


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疲れた顔で帰宅するサラリーマンを
横目にパーキングに車を泊め、
夜中のみなとみらいを散策することにした。


平日の夜だからなのか人が少ない。
愛を語り合うカップル達を横目に
海沿いの歩道をゆっくり歩いた。


私、夜中に歩く横浜が好きなんだ。
彼女は横浜港の灯台を見つめながら、
そう呟いた。


俺は昼間や夕方の横浜も
好きだけどねと伝えると彼女は、
君は都会が好きなんだねと言った。


都会が嫌なの?と再び質問すると
彼女は少し下を向いて言葉を返す。


都会は楽しいけど、
東京にすんでいる人はみんな他人に無関心じゃん。みんな何かと生き急いでいるし。
だからそういう人達と一緒にいると
私まで疲れちゃう時があるの。


いつも人生を謳歌している様に見えた
陽気で明るい彼女の表情が、
どこか曇っているように見えた。


そこからベンチで写真を撮ったり、
コンビニでプリンを立ち食いしてから
筆者の家に戻ることにした。


泊まっていく?と聞くと
彼女は黙って頷いた。


その日、彼女と初めて関係を持った。


翌朝、朝御飯を一緒に食べようとしたら
目玉焼きにマヨネーズと醤油をかけていた。


その姿を見ると、
やっぱりこの女は変わっているなと
笑みがこぼれた。


その日以降も家でたこパをしたり、
ドライブに出掛けた。

毎回なんの前触れもなく、
気まぐれに連絡を寄越してきた。


体の関係はあるのに恋愛感情はお互いにない。


でも、ただのセフレとは少し違う関係。


いくら考えても無駄なのでこの関係に
名前を付けるのはやめようと思った。


でも彼女と過ごす時間は楽しくて刺激的で、
退屈だった筆者の日々に彩りを与えてくれた。


ただ、そんな彼女との関係にも
突然、ピリオドがやってきた。


7月下旬 月曜日 AM1時。
いつも通り非常識な時間帯に
LINE電話の着信音が鳴る。


眠い目を擦りながら電話に出る。


また、ドライブの誘いかなと思ったけど
今回は違った。


電話越しの彼女の声は
どこか吹っ切れた明るさがあった。


突然ごめんね。
わたしね。来月頭に引っ越すの。


突然の告白に目が覚める。


話を聞くと彼女は会社をやめて
地元(東北)に帰ることにしたらしい。


なんと1週間前に会社をやめることを
決断したらしい。


思い立ったらすぐ行動。
破天荒な彼女らしい行動力だなと思った。


東北に帰ってからは暫くバイトでもして
来年辺りにカフェでも始めようかなと
思ってるんだけどどうかな?


きっと君なら大丈夫なんじゃない?


非現実的な彼女の思いつきのようにも
思えたが、ぶっとんだ彼女なら
なんだかんだうまくやれるんじゃないかと
無責任ながらそう思った。


なにその適当な返し。と電話越しに
怒っていたが、止めても無駄なことぐらい
筆者にでも分かったことだ。


辛気くさくなるのも嫌だから、
そろそろ電話切るね。
また東北に来たときに電話ちょうだいよ。
今度は私がドライブに連れていくからね。


「さよなら」じゃなく
「またね」と言って
お互い電話を切った。


今までありがとう。東北でも頑張れ!
という筆者メッセージに対して
うんちのスタンプが帰ってきた。


最初から最後まで変わっている子だった。


それから数日。


東京では、梅雨明けが宣言された。


じめったい雨雲はどこかへと消え
カンカンと陽光が照りつける。


梅雨明けとともに彼女は東京を去った。


「東京を去る女」と「東京に戻ってきた男」の2ヶ月間の短くも濃い交流だった。


東京を去ろうとする女が
何故筆者と会おうとおもったのか。


何度も連絡を寄越してきたのか。


もしかしたら東京にいた最後の証を
残したかったのかもしれない。


東京に帰ってきた筆者に
何か引き継ぎたかったのかもしれない。


それだけは最後まで分からなかった。



他人との交流が憚られるご時世の中で、
1人で過ごす時間が長くなると、
人との出逢いについて考えることがある。


自宅で1人過ごすことにも苦痛はないが、
誰かと出逢って、一緒の時間を過ごす。


嬉しい出来事も悲しい出来事も
目の前の相手と思い出を共有できる。


そんな出逢いや交流を待ち望んでいる
自分がいることに気づいた。


出逢いや一緒に過ごした時間に
何か意味があったのかは分からないし、
出逢いには悲しい別れがつきものである。


でもそんな一期一会というものが
きっと人生の醍醐味なのだろう。


きっと2021年の夏はこのまま、
暗い自粛ムードのまま過ぎていくだろう。


でも、彼女と過ごした日々には
確かに夏の匂いがした。


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